【伊達】
“お兄さん、綺麗な姉ちゃんの恋人かい?”
出店の店主の言葉に驚いた。
こ、恋人……!!??
犬猿の仲の俺と猿飛が…?
俺がふざけて、“初デート”…と言うと…
「そうなんです…ね、“直樹”さん?」
ふいに呼ばれた名前…
俺は言葉を発するのが精一杯だった。
名前なんて聞きなれているのに、まるで別人のような気がしてしまう。
気前のよい店主がくれた“たこ焼”を食べながら、俺は溜め息をついた。
…なぜ俺はあんなに緊張した?
…なぜこんなに悩んでいる?
考えて込んでいたら、猿飛に声をかけられ、はっ!!とした。
そして気が付いたら口走っていた…
“お前がすごい綺麗だからだ”
……と。
今のは忘れてくれ…と、言おうとした矢先、猿飛は言ったのだ。
“先生も素敵ですよ”
猿飛の顔を見ると真っ赤だった。
…たぶん俺も真っ赤だろうな。
2人とも何とか食べおわり、花火を見るために移動した。
「そういえば、先生は花火好きなんですよね?」
「おぉ!!…あの華やかさと儚さが闇の中に咲くのが……」
「もう分かりましたから!!行きましょうよ……直樹さん?」
「な、直…樹!?」
すると、猿飛は意味深に笑った。
…確信犯だな、こいつ…
悔しくなって、俺は猿飛の手を握った。
「せ、先生…!?」
そして自分の方に近付けて、耳元でささやいた。
「…浴衣、似合ってるよ…なつめ…?」
「な、何言って…!?」
手を離せというなつめを綺麗に無視しつつ、俺はしっかりと手を握る。
そして諦めたかのように、なつめも手を握り返してきた。
