「ねぇ、真希ちゃんってなんで水商売やってるの?」
麦茶を出していると、テレビを見ていた小雪さんが言った。
なんでって言われてもなぁ・・・
「キャバクラで働かなきゃ食べていけないからですよ」
少し笑いながらそう言って、麦茶を差し出す。
「ていうか、真希って本名?」
「ふふ、違いますよ」
私も麦茶を飲みながら、床に散らかった雑誌を片付ける。
普段あまり家にいることが少ないからどうしても疎かになる。
「うっそ!絶対真希だと思ってた、本名は?」
「んー」と言って本当の名前を言うべきか、言わないべきか迷う。
でもいいか、この人なら。

窓の外を指さし、「あれです」と答えた。
「え?」
少し不思議そうな小雪さん。
窓の外に映るのは、夜空に見える大きな月。
「満月がどうしたの?」
「それですよ、私の名前」
「まんげつ?」
「ううん」
首を振る。
「みつき、私の名前」