「満月?」
彼は確かにそう言った。
傘が水を弾き、満月がゆっくりと顔を上げる。
「・・・拓」
名前を口にすれば、彼は笑う。

その場に座り込んでいた満月が勢いよく拓に飛びついた。
尻もちをつき、倒れこむ。
「なんだよ、やめろよ」
口ではそう言うが、顔は笑ったまま。

「・・・満月?」
その笑顔とは対照的に、徐々に涙が溢れる。

現実は残酷で。
退屈だから何かを求めてしまう。
この世界には、どうしてもやらなくちゃいけないことがある。
目を背けちゃいけない出来事がある。

「殺した」
「え?」

「あたしね、お父さん殺しちゃった」