家へ帰ると、お母さんが待っていた。
「早く着替えなさい」
弱弱しく、一言だけの言葉。
黒いスーツに身を包む姿は、痛々しくもあって。

どれだけ普通の女の子を演じられるか。
自分の力量に賭かっていることも知った。
取り繕う必要はない。
゛兄を失くした妹゛であればいい。

学校の制服に着替えて鏡を見る。
どんな風に見られるんだろう、私は。

ポケットにしまっておいた写真を手にする。

全てを壊したのは、私かもしれない。
だけどその起爆を作り上げたのは、私じゃない。
悪くない訳じゃない。罪がない訳でもない。
でも、みんな悪いじゃない。

父も、兄も、私も、拓も。
悪いんだ、みんな。

だけどリスクを背負っても、守ってみせる。
そのためなら、どんな事だって・・・。

みんなが笑っている家を作りたいのに
どうして私はそれを壊していくの?
家族を、泣かせるの?

真実を知っているのは、私と拓、そして・・・。