「バレたら自分どうなるか分かってる?」
「・・・わかんない」
「聞こえない」
「わかんねぇよ!」
吐く息が白くなっていく。
拓の目には涙をいっぱい溜まっている。
泣きたいのは私だよ。
けど泣けない。泣きたいとも思わない。
段々と嗚咽をつき始め、地面には涙の跡が残り始める。

「ずるいんだよ拓は」
下を見ていた拓が顔を上げる。
「なんで満月が泣きたいって思うときに先に泣くの?」
公園と言っても、私と拓だけが居る訳ではない。
散歩をしている人たちだったり、遊んでいる子供も居る訳で。
急に大声を出した私にたくさんの視線は向けられた。

「お兄ちゃんのことは絶対にバレさせない、そんなことはさせない」
「じゃあ父親はどうするんだよ」
「そんなの、拓が一番知ってることじゃん」
あざ笑うように鼻で笑うと、また溜め息をついた。
「そんなことしなくたって父親は黙っておいてくれる」
どこからそんな事が言えるんだろう、と考える。
お父さんも結局は人間だ。
どんなに口約束をしたって、裏切るときには簡単に裏切る。

信用できるはずがない。
兄の日記と写真が、何よりそれに現実味を与えているから。
いつも通りに母と楽しそうに話し、私の前では父になる。
馬鹿みたい。そんなの。
復讐心、とでも言ったほうが正しいか。