「拓は怖くないの?人を殺したんだよ、すぐに周りに気付かれるって」
人を殺して怖くないはずがない。きっと拓もそう思ってるはず。
向き合って聞いてみるけれど、拓の表情は無表情のまま。
「怖くないよ、たぶん」
その表情があまりにも怖くて、目をそらした。

「お父さんがね、気づいてるの」
「え?」
あまりにも早い返事に笑う私。
「もし気づいてなんか言ってきたらーそのときは・・・」
その先を言いかけたところで拓が言う。
「殺す、とか言わないよな?」
分かってるんじゃん。
その他に何の答えがあるんだろう。
どうすんのよ、私と拓が捕まったら。
「ピンポンピンポーン」
拓の冷たい鼻を人差し指で突っつく。
笑っておどける私。
「・・・本気で言ってないよな?そんなことしたらお前・・・」

「拓がお兄ちゃんを殺したんでしょ?」

拭うことの出来ない現実。
本当はこんなことは言いたくない。
でも、それが本当だから。
どんなに、周りが否定したって。
目の前で自分たちは見たんだから。
人間の命が終わってしまう瞬間。
残酷で、儚くて、あっという間の瞬間。
「何泣きそうになってるの?馬鹿じゃないの?」
自然と声が荒くなっていくのが分かる。
それでも何も言わない、ずるい人。