「ただいまー」
家に入り靴を脱ぐ。と言っても誰も家には居ない。
溜め息を一つつくと携帯を開いた。
自転車に乗っていたから気づかなかったんだろうか。
満月から電話がかかってきていた。
とりあえず来ているメールを開く。

『助けて』

三文字しか書いていないそのメールを開いた瞬間、俺は走り出した。

満月は同い年の13歳だった。
初めて友達の家で会ったとき、妙に無愛想で笑わないのが印象的で。
だけど2人で遊んでたときにはそのイメージとは異なった。
普通に笑うし、普通に悩みも抱えて。
大人っぽいという印象とは違って、普通の女の子。
取り巻く環境は決して普通ではないんだけれど。
それは自分と少し似ている部分があるかもしれなかった。

自転車に乗り、うろ覚えの道を辿りながら満月の家へと向かう。
家の前に着き電話をかけるけれど、留守電になってしまう。
「鍵開いてるんのかな・・・」
深呼吸し、家のドアに手をかける。
なぜか鍵は閉まっていなく、簡単に開いた。

家に入るけれど誰かが居る気配はまったくしない。
電気もついていないし、本当に満月が居るのかも分からない。
もう一度携帯を開き電話をかける。
すると、2階の部屋から着信音が聞こえた。
恐る恐る階段を上がる。
階段を数段上がったところで、悲鳴にも近い声が聞こえる。
奥から二番目の部屋。

「満月・・・?」
ドアを開くと目を真っ赤にして抵抗する満月と、その上に馬乗りになって口を塞ぐ、満月の兄の姿があった。