両親が仕事から帰ってくるのはいつも二十二時頃だった。
共働きで忙しい両親。慣れていること。
それに合わせて帰るという条件。
待ち合わせ時間より五分前に着いたけれど、公園にはもう拓の姿があった。
「ごめん、待った?」
「ううん」
と言っているけれど、街灯に照らされる拓の頬と鼻は真っ赤。

「じゃあ行こうか」
自転車に跨り、二人だけの旅が始まった。
11月とは思えないくらいの寒さで、風もとても冷たい。
マフラーを巻いているけれど隙間から入ってくる風のせいで感覚が麻痺する。
そして約40分かけて来たのは、大きな川原。

「ほら、星」
そう言われ、上を見てみると数え切れないくらい輝く星。
「すごい・・・」
寒さも忘れて駆け出すと、余計に星が近くにあるように見えた。

本当に小さくて、でも輝いているのは分かる。
初めて見る本当の星。
「すごいすごいすごい!」
あまりの感動に拓に飛びつくと、よろけて倒れてしまった。
その瞬間、私のバッグから出てきたのはマフラー。
「これ何?」
立ち上がりながら、拓が手に取る。
「あ、忘れてた・・・」
受け取りながら思い出す。
拓に渡そうとしていた、マフラーだということを。
星のことばかりに気をとられていて忘れていた。