出来るだけ音を小さくしながらテレビを見ていると、階段が軋む音がした。
急いでテレビを消して勉強をしたフリ。
部屋へと上がってきたのは母親だった。
『ねぇ、満月』
『何』
そっけない返事をすると、母が言った。
『あんた高校行くの?』
『分かんない』
『お母さんとしては、お金もかかるしなるべくは行かないで欲しいんだけど』
なんも言わない私。
それ、昨日も聞いたよと思いながら。

少しの反抗心。
『だったら私、中学卒業したら東京で暮らすから』
『出来るの?お母さんは何も言わないけど、お金入れてね』

そこで私の夢は途切れた。電話が鳴ったために。
なんて後味が悪い夢なんだろう。
冷や汗をかいている額をティッシュで拭いながら、私はまた眠りについた。
日記に残したたくさんの言葉。

【いつまでこんな生活続くんだろう】
【拓に会いたい】
そのどれもが、文字を見るだけで悲しさに満ち溢れてる。

友達も居なくなって、毎日のように家に居た。
そのうち学校も行かなくなって、一人で家に居て。
人間が人間じゃなくなるみたいで怖かった。
ふいに真希さんのことが頭に浮かんだ。
子供を連れているその姿。
忘れよう、嫌なことが思い出される前に。