夜中散歩

拓の家が何人家族か、聞いたことも聞かされたこともない。
本当にこの人が拓のお父さんなら、いつか拓に会えるかもしれない。
そう思う私の心に強い歯止めをかける、理性。
会ってどうするの?一方的に別れた私が何を言ってんのか。
馬鹿げてると思いつつ、それでも頭はそう上手く働いてはくれなくて。
「そういえば、渡月さんってお子さん居るんですよね」
口を開けば、拓のことを知ろうとしてしまう。

「あぁ、居るよ。わがままな17歳が」
17歳。渡月拓。
偶然かもしれない。でも偶然とは考えられない。
「わがままなんですか?」
「そう。最近彼女が出来たつってませてるし」
彼女・・・
そっか。拓は彼女が居るんだ。

そりゃそうだよね。普通の男子高生なら彼女の一人や二人ぐらい。
すごく気になる。拓のこと。
近づきたいとかそんなんじゃなくて、拓がどんな風に生きているか。
「拓くん、かぁ」
呟くと「気になるの?」と渡月さんが言った。
「そんなんじゃないですよ、それよりコレ!似合いますか?」
適当に選んだ服を選んで体に当てる。