ツンデレ美女の恋愛事情~新・素敵すぎる上司~

「望愛…?」

走り出してしばらくして、阿部さんがボソリと呟いた。

『望愛』って聞こえたけど、私の聞き違いかしら?

阿部さんの横顔をポカンと見詰めていたら、阿部さんもチラッと私を見て、「返事は?」と言われた。

「あ、はい」

「俺達は今から恋人同士だから、お互い名前で呼び合おう?」

ああ、そういう事か…

「分かりました」

「あと、敬語もなし」

「はい」

「『はい』じゃないだろ?」

「あ、えっと、うん」

「そうそう。ところで、俺の名前は知ってるか?」

「知ってますよ…、じゃなかった、知ってるよ」

「じゃあ、呼んでみて?」

「は…うん。し、慎司、さん」

「ぎこちないなあ。早く慣れてくれよ、望愛」

「はい。あ、うん」

「あはは。望愛は苦労しそうだな」