ふと顔に優しく触れる指先を感じて体が呼び起こされる

「大丈夫

大丈夫だから」

とささやく声がする


夢の中だけじゃなく、実際にも泣いていたのか、無意識にしゃくりあげた

自分のその声に意識も覚醒して、うっすらと目をあけると覗き込むように近くにある顔に驚いて、慌てて上半身を起こした


「夢見ながら本気で泣いてる人はじめて見た」


半分笑いながら、半分真剣に話すその顔に見覚えがある

長めの髪形がよく似合う端整な顔立ち

目にかかる前髪がますますそれを強調している

化粧もしていないのにきれいな肌

うすく色づいて少し微笑んだ唇

長い足を折り曲げてしゃがんでいたのか「よいしょっと」という掛け声と共に立ち上がると、座っているアタシからは太陽が隠れるほどの長身

背後の青い空に目の上が鈍く痛む

白いロンTにデニムをあわせただけのシンプルな服装も、清潔感が演出されているみたいで似合っている

「あれ?俺のこと忘れちゃいました?」

寝起きのはっきりしない頭でぐるぐると考えていると、彼からヒントが与えられた

「夏に、海で、」

そうだ、妹の・・・・妹のあみの彼氏だ

「あみの・・・・」

彼は微笑むと「正解!」と嬉しそうに笑った