【3万㌳シリーズ 1 】天使の生息域

 将来の話をはじめた時に、美羽はおかしなことを口にした。

「将来の夢かー客室乗務員か、宇宙ステーションで事務か、エベレストの救助隊の詰め所の看板娘かな」

「何だよそれ。宇宙で事務って」

「へへ、1000%無理だって分かってるよーでも夢はタダだよー」

 悠真はこらえきれず笑ってしまった。

 まだ宇宙なんてごく一部の人間しか行けない。

 難しい訓練や研修を耐え、適性があってやっと行ける場所に事務なんて仕事はないのだ。
 
「時給850円、勤務地宇宙ステーション! そんな未来はいつか来るよね」

 でも美羽は未来にそんな平凡さを求めているようだ。

 今は難しいことでも近い未来にそれが叶うと真剣に信じていた。

「俺はね~どうしようかな」

「何でもできるよ。悠真の世界は地上どこまでもずーっと繋がってるんだから」

「それ言ったら美羽だってそうだろ。パリ5回目の先輩は俺よりずっと色々な場所を知ってるんだろうし」

「そういうお話じゃなくて。迷っても平気ってこと~」

 美羽が頬を膨らませるのがおかしくて、悠真は笑った。

 カチカチのハーゲンダッツにスプーンを突き立てて、なかなか食べれないとふてくされる美羽に、悠真は代わりにスプーンを差し込んであげた。

「男の子すごい!」

「アイス好きなの?」

「うん、大好き」

 感謝を受けてちょっと照れくさかったが、調子にのって美羽の母親の分もやってあげた。