【3万㌳シリーズ 1 】天使の生息域

「初めはなんか、不機嫌なのかなと思ってましたけど、おかげで退屈しないでパリ行けそうです。パリについたら、どこに観光しに行くんですか」

「観光──は、そうね。色々見れたら、いいわね」

「美羽5回目だっていうから、学校の友達に頼まれたやつがどこにあるか聞いてみたんですけど、どれも分からないとか言われちゃって……俺何度か行ってはいるけど、詳しいわけでもなくて」

「……これはサンジェルマン界隈、こっちはガルニエ宮に抜けるパッサージュに行けばありそうよ」

「このポワラーヌのクッキーってやつ、美羽も食べたいとか言って場所聞いてきてましたよ」

 リストを見ながら説明してくれる母親の言葉を地図にメモする。

 どうやらクラスメイトの飯島から頼まれた品々はシャンゼリゼ大通りを歩くだけで済むものではなさそうだった。

 読書灯に照らされた母親の指が悠真のリストにあった場所を移す。

 美羽が行くのだから美羽にやらせればいいのだが、当の本人は2人に挟まれてぐっすりと眠っていた。

「美羽は買いにいけないから」

「俺もフランス語なんて、さっぱりですよ!」