家に着くとヘルメットを外した忍がちょっと不機嫌な顔をしているのに気付いた。
「忍?どうかした?」
「…美鈴に右京を会わせたくなかった…
あの子人の彼氏を横取りするって聞いたし…
それに…」
「…それに?」
「…右京が美鈴に笑いかけるんだもん!」
俺はバイクに跨ったまま忍の顔を覗き込んだ。
真っ赤になって今にも泣きそうな忍に笑いが込み上げてきた。
肩を揺らして笑いを堪えているのがバレて急に忍が怒り出した。
「な…なんで笑ってんのよ!」
「ククク…ごめん、ごめん!
忍が可愛い事言うからついね」
バカバカ!言いながら忍にポカポカ叩かれたが笑いが止まらない。
「アハハ…悪かったよ。謝るから機嫌直せよ」
叩き続ける手を掴んで言うと赤面した忍が力を緩めた。
「…今回だけだからね…」
「ん」
「私以外の女の子に笑顔見せちゃヤダ…」
「ん」
「私だけを見…」
「なぁ…もういいか?」
俺は忍の答えを聞かずに唇を奪った。
唇を離すと至近距離で見つめ合う。
こんな忍との甘い時間も…
…やっぱり背後に感じる殺気によって遮られる。
「げぇ!?またかよ…」
「…うぅぅきょぉぉ!!
おのれ、またしても…」
師範から逃げ回って道場に転がり込んだ。