仕事場の工事現場までは、家から車で30分。

だが家を出て10分もしないうちに渋滞にはまる。

「ああっ…もう…」

ブレーキを踏み、ハンドルの上で両手を組んで純は声を上げた。

純は土木作業員の中でも比較的責任ある立場だ。

遅刻など許されないのだが。

信号が青に変わり、発進しようとして。

「こらぁっ!」

歩行者信号を確認せずに道路に飛び出そうとした小太り…いや大太りのサラリーマンにクラクションを鳴らす。

「信号よく見ろぉ!赤でしょうが!」

「ひぃっ、すみません~」

額に汗を浮かべながら、そのサラリーマン…山田 太郎(やまだ たろう)はペコペコと頭を下げた。