そんな昔の事を思い出していた聡は。

「!」

ポケットの中の携帯の着信音で現実に引き戻される。

片手を上着のポケットに突っ込み、画面を確認。

メールは秀一から、仲間全員に一斉送信されたものだった。

内容を確認する。

『動物園は危険だ。絶対に近づ』

文章は中途半端な形…まるで書きかけのように終わっていた。

聡は即座に察する。

…あのリーマン、何かあったのか…或いはゾンビに…。

秀一の身に何かあった事に、聡は驚きを禁じ得ない。

あの男はただのサラリーマンではない。

人間同士の喧嘩ならば聡に軍配が上がるかもしれないが、ことゾンビ相手の戦闘ならば、秀一はこの世界の誰よりも優れた判断力と行動力を発揮する男だ。

だからこそ、聡も秀一にだけは一目置いていたし、誰がリタイアしても秀一だけは必ず生き延びると思っていた。

それ故に聡は彼に対抗心を燃やし、それを生き延びる為の原動力にしていたのだが…。

「あの男が…死んだのか…」

その事実を知った時、聡の胸に去来したのは意外にも虚無感だった。