医者の息子に生まれて、幼い頃から親に、お前は医者になるのだと、英才教育や名門校をお膳立てされ、親の敷いたレールの上を走るだけの人生も辛かろうが、それはそれとして、ある種の使命感と言うものが芽生えてしまえば楽しくやれるだろう。

親の期待に応えたい、ただそれだけの為に生きている大学生はごまんといるはずだ。

しかしその気持ちも含め、自分の人生を、どのようにしてそれなりに成功させたら良いのかと考えた時、余りにも自由で、特にこれといった才能もなく、死ぬほど好きだという趣味もない自分に気付いた。

自分は何がしたいのか、何が向いているのか、向いていなくても好きなことも、好きでもないのに人より秀でた部分というのも特に無い。

こうなると、一体俺はなんの為に生まれてきたんだろう?という所にたどり着いてしまう。


生まれて来た意味なんか最初から無くて、今まで生きた22年間はただの無意識と偶然の積み重ねなんだと思うと、それもまた虚しくなる。

一体俺はなんなんだ?


ベッドの上で昨日と同じ事を考えていた。


僅かに開けた窓の隙間から、湿った空気が吹き込んでくる。カーテンは小さくそよぎ、真っ直ぐに差し込む光りが波打っていた。