そう言うと音都はペンを止め、表情を強張らせた。 無言で向けられた笑顔は固かった。 当たり前だ、笑う気力もなくすだろうさ。 「…行くか」 音都がメモ帳を胸の前で抱きしめて頷き、俺の後を付いてくる。 静かで、静かで、月の輪郭が夜空にくっきり浮かぶ夜。 俺は独りの少女を拾ってしまった。 空気が冷たく震える夜だった。