さよならさえも、下手だった



夜十という名前は好きではなかったけれど、1004という呼び方はもっと気に入らなかった。

そう呼ばれる度に、俺はいくらでも代わりのきく存在なんだと思えてしまう。

刹那にとっては、いてもいなくても支障のないものなんだと。



組織で教え込まれたことは、まだ12歳だった俺には耐えきれないほどむごかった。

銃の打ち方、ナイフの使い方、急所の狙い方。


何度も逃げようと思って、そのたびに思いとどまった。
逃げたって、居場所はどこにもない。

牢獄のような、地獄よりも恐ろしいこの場所こそが、俺の唯一の居場所だった。


逃げることなんて不可能だった。


それに気づいた時はもう、気が狂いそうなほど哀しくて。

泣きたいのに泣けないこともあるのだと、身をもって思い知った。