さよならさえも、下手だった






――俺の目の前で家族が殺されたのが12歳の時。

俺には父も母も兄もいたけれど、全員があっという間に動かなくなった。



最後に残ったのは、どうしてだか俺ひとり。


動かなくなった家族の前には、一人の男がいる。

いたずらをして怒ったときの母さんより、俺がふざけて暴言を吐いた時の父さんより、けんかをして本気で腹を立てた兄さんより。

冷たくて恐ろしい目だった。


真夏だったのに、その目を見ただけで冷凍庫の中に放り込まれたように寒くなった。


その男はにやりと笑いながら血の付いたナイフに舌を滑らせた。
普通の人ができることじゃなかった。

「お前、いいな」

彼は俺に言った。

「優しすぎる目をしている」