さよならさえも、下手だった



死んだ後の、満足しきった顔。
さっき俺と目が合ったときのあきらめきった顔とはまったく違う。


生き切った、と表情が物語っていた。

殺されたというのにうれしそうだった。


どうして。


「綺麗なんかじゃない…」


俺は死神でもなければ綺麗でもない。
身寄りのないたった一人の少女だって守ることをためらう、弱い人間だ。

今まで殺してきたのとは違う、胸の中を風が吹き抜けていくような感覚。
心細くて、誰かに寄り添いたくなるような寂しい気持ちにさせる。



だから俺は落ちこぼれなんだ。

仕事だからと割り切ってしまえば簡単なのに、どうしたってそうすることができない。


人をひとり殺すたび、心の奥底で足掻いてきた。

そんなこと、知りたくなかった。

今まで通り、何か違和感を感じながらもその違和感の正体に気づくことなく仕事を続けていればよかったのに。