さよならさえも、下手だった



重い足を引きずるように待ち合わせに設定された場所へ向かう。

今回依頼してきたのは若い男だったはずだ。



「今回の依頼人は、あんたか?」

人気のない公園の噴水前にいた男にそう話しかけると、男はゆっくりとこちらを振り返った。
日光に当たった髪が金色に光る。

「ああ、そうだけど」


そう言って笑った顔は、とても俺みたいな殺し屋に依頼をしてくるような人には見えなかった。


けれどこっちも金をもらって仕事をしている以上、文句は言えない。

「わざわざありがとう」

「誰を殺せばいい?」


物騒な質問にも臆することなく、男は微笑んだ。

「…俺の、父親だよ」