「……必要ない」
櫂が笑いながらあたしの頭を撫でた。
「あたしだって訓練すれば、紫堂の警護団に入れて、今度は櫂を守れるように……」
「守る必要ねえじゃねえか。お前はそんなことしなくていいんだよ」
煌が大笑いをしたから、あたしは益々むくれてしまった。
「芹霞。君は、僕達に守られていればいいんだよ?」
ふわり、玲くんは笑った。
「何か……駄目人間になる気がする」
あたしはぼやいた。
「皆、あたしに甘々過ぎる」
それは前から感じていたことだったけど。
「あたしがこれ以上調子に乗っちゃったら、どうすんのよ?」
それでなくとも美貌の男達。
姫扱いされたい女など、ごまんと居るというのに。
「いいんじゃね?」
煌の褐色の瞳が甘く揺らいだ。
「調子に乗って自分で何にも出来なくなればいいさ」
「は?」
「そうだね、何も出来なくなって僕達がいなければ生きていけなくなればいいね」
玲くんの鳶色の瞳も、妖しげに揺らぎ始める。
桜ちゃんは今まで通りだんまりだけれど。
櫂は――。
「俺達は、護りたい女がお前で十分満足しているのさ。
――今の処、"我慢"だけれどな」
そう笑う。

