「……。お前にやる」
突然そう言われて、ネックレスを目の前に突きつけられた。
「や、やる?」
今度はあたしの声がひっくり返った。
「玲と櫂のは身に付けて、俺のはねえってのはぜってー、嫌だッ!!!」
その顔は、笑ってしまう程真剣で。
……実際笑ってしまったのだけれど。
「笑うなッ!! いいだろ、俺気に入った奴をやるってんだ。退院祝いだよッ!!!」
ああ、煌が真っ赤っか。
「お前が嫌っていっても、やるからな」
さらに強く鷲掴まれたネックレスを、ずいと突きつけられた。
引く気もないようだ。
「わ、わかったわ。どうもありがとう」
一体、皆何なのだろう。
高価なもの、大切なものを貢がれたあたしは、何とも面映ゆい心持ちになる。
大切な人達が貰ったこの贈り物――やはり全部持ち歩かないといけないだろうな。
「……芹霞さん、貸して頂けますか?」
それまで黙り込んでいた桜ちゃんが、大きな目をくりくりさせて手を出した。
珍しい。
自分からあたしに何かを求めるなんて。
あたしは頂き物3点を桜ちゃんに渡すと、桜ちゃんはスカートのポケットから何かを取り出した。
「桜それ……ロザリオ?」
玲くんが怪訝な口調で聞くと、桜ちゃんは頷いた。
「ええ。実はここに来る前に貰ったものなんですけれど」
そう答えた桜ちゃんの掌には、すっぽりと収まるくらいの十字架のネックレスがある。
等間隔に真珠がおかれた細い鎖は、不自然な短さで切れている。
そして鎖の先には、何か飾りがついた十字架。
どんな十字架かはよく見えないけれど、燻し銀のように鈍く光っている。
そして――針金?
わざとらしいくらいに、何重にも巻かれた十字架と鎖の連結部分。
桜ちゃんは少しそれを見ていたけれど、やがて意を決したかのようにぐるぐると巻かれた針金を解き始めた。

