いばら姫と王子様 ~AfterDays~


「……判ったわ。玲くん、櫂ありがとう。でもどう身に付けていようね?」


ポケットに入れて持ち歩くにも芸がない。


ストラップにして、金色の携帯につけようかな。


その時、黙り込んでいた煌が、首から外した何かをあたしに差し出した。


きらきらと揺れるそれはネックレス。


「え、煌。ネックレス買ったの!? 黒ダイヤ!!?」


すると煌は笑った。


「違う。黒尖晶石(ブラックスピネル)。黒ダイヤのなり損ないだけど、綺麗だろ」


あたしは頷いた。


「煌の綺麗な髪の色が映えてとっても格好いいね」


「き、ききき綺麗ッッ!!? か、かかか格好いいッ!!?」


煌は声を裏返し、大げさ過ぎるくらい驚いて、これ以上ないくらいに真っ赤になった。


こういう処、可愛いなあ、煌は。


煌は昔から、櫂とを比較して卑屈になりすぎる処があるけれど、煌だって十分整った顔をしてるし、筋肉質の引き締まった身体してるし、十分いい男だとあたしは思っている。


香水女にもモテてるし、学校だってどこだって…櫂程ではないにしても、隠れファンクラブが存在すると弥生から聞いてるし。


知らぬのは煌だけで。


信じぬのは本人だけで。


煌は頑固で恋愛沙汰に鈍感だから。


大体、比較対象が悪すぎるんだ。


もっと普通人を比較すればいいのに。


それに――


煌はあくまで煌であって、櫂ではない。


絶対櫂にはなりえないのだ。


彼が欠点だと思っている橙色だって、煌のものだから鮮やかに光彩を放つ。


もし櫂の顔で髪が橙色だったら、存在自体が陳腐になりすぎる。


そこの処を、何年経っても煌は理解出来ないらしい。