あたしの幾度にも渡る辞謝を押し切って、半ば無理矢理…何と午後早々には、彼は満面の笑みで石を抱いて現れた。
紫堂財閥の力でも利用したのだろうか。
にこやかに手渡されたその箱からしていかにも高価そうで、原石を包む白い布は……絹だろうし。鑑定書なんてものも付随している。
棒状の2cmぐらいの大きさで、吸い込まれそうなその色合いは深いもので。
一体、幾らするんだろう、これ。
庶民感覚は、まず値段か気になった。
分割でも大丈夫かな。
「だから。僕からのプレゼントだって。男の僕に恥かかせないで?」
玲くんも頑として引かない。
その時ドアが開いて、櫂と桜ちゃんが現れた。
「――玲。銀座の『CROSS』の社長が直々に礼を言いに来たぞ。お前一体何を……」
ああ、そんな時間帯か。
ようやく3行メールを脱却した櫂から、この時間に行くとメール文で告げられていた。
しかし――。
櫂、今何て言った?
"銀座の『CROSS』"?
あの――泣く子も黙る、高級宝石店?
セレブ御用達の、女の子が一生に一度は手にしたいと言われるブランドの!?
「や、やっぱり高いんじゃない、これ……」
原石とはいえ、あたしの持つ手がぷるぷると震えた。
「大丈夫だって。僕の小遣いで買えるくらいの可愛いものだよ?」
その微笑みは、妖しげな色気に包まれていて。
「玲。お前まさか"給料の3ヶ月分"つぎ込んでねえだろうなッ!!?」
遅れて現れた煌が、訳の判らないことを言って威嚇してきた。

