あたしは、そうして見習いではあるが、ネイリストになった。

彼、との出逢いも、こうして新宿に勤めなければ、なかっただろう。

父や母が、反対していたら。
あのとき、綾子が誘ってくれなかったら。たられば、はいっぱいある。

彼がいない世界。
彼の笑顔を知らない、彼を知らないあたし。
想像しただけで、泣きそうになる。


あと少しで、お昼時間だ。
今日もどきどきしている。
彼の笑顔を、想像してみた。
顔が、熱くなった。

あたしは、ずっと恋をしている。