目の前にいる、マスクをしたあたしとほとんど変わらないくらいの歳に見えるおねーさん(多分)。
あたしの中の尊敬できる人物リストにたった今ランクインした。

あたしの爪が、ぴかぴかに、つるつるになっていた。
おおお。
ネイルしなくてもこれで充分なのではないか。

爪って、こんなに綺麗になるんだ。予想外の出来事に、にやにやしつつ挙動不審になっているあたしを見た綾子が、得意げに言った。

「ね?やってみるもんでしょ?でも、本番はこれからだよ」

マジかぁ。
あたしの爪が、お爪様、と言われてしまう程きらびやかになる所を想像した。
ブツブツ言いながら付いてきたあたしだけれど、その頃には出来上がりがものすごく待ち遠しくなっていた。

でも、なんかちょっと悔しいので、綾子の発言には思いっきりしかめっ面をして「べ~」と舌を出しておいた。
目の前のおね―さんが、楽しそうに笑った。
おね―さん、期待してますよ。


そこの店は小さな店だった。
ただし、優雅感が、そこかしこに溢れていた。

店内はゆったりとした洋楽がずっと流れていた。店内にある大型のモニターでは、消音されている字幕付きの洋画が放映されている。

暖色系の照明に照らされて優しく浮かび上がるシックなインテリア。

あたしがいろいろ見とれている間に、ネイルはどんどん仕上がっていた。