ネイリストという仕事に興味を持ったのは、大学二年の時だった。
綾子に、ネイルサロンに一緒に行かない?と誘われたのが始まりだ。


「友達紹介キャンペーンを今やっててね」

紹介したほうもされたほうも、
「とってもお得!」になるんだそうだ。

正直、興味がなかった。
気を許すと、すぐにカールするこの髪の毛のブローと、気休め程度のメイク。
女子しかいない美大の中で、日々気にする部分は、それくらいのものだった。

「一回ネイルすると、すごいハマるよ?自然にお洒落したくもなるし。ちょっと試してみない?今ほんとお得だしさ、ユウは元がいいんだから、もったいないよ」

あのねぇ。
あたしがダサいって言ってるようにしかきこえないんですけど。だいたい、なんであたしなんよ?誰か他のやつに頼めば?


あたしは講堂の机に肘をついて、ちょっと呆れ顔で答えた。

「そ、そうじゃないって!
そういうことじゃなくて!」

じゃあ、どういうことなんさ。

「他のみんなに頼むって言っても、自主休校とかいって学校きてないし、キャンペーンは今日で終わっちゃうの。
だから、お願い!ね?ね?」

綾子は、両手を揃えて、頭を下げた。

きょ、今日?!