『伝わらない思い ~アリ編~』


うさのは、外でご飯を食べるのが大好き。

優しい日ざしを浴びながら、薫るそよ風を肌に感じながら。
そしてご飯をほおばると、ただのおにぎりがとびきりおいしいごちそうに変わる。

それはよく晴れた、五月晴れのあるお昼のことだった。

この日もうさのは、お弁当を持って外へ。
建物を出てすぐのところに、噴水のあるちょっとした広場がある。
うさのは噴水の見えるベンチに腰を下ろして、お弁当を広げた。

今日のお昼は、おにぎり。
焼いたシャケをほぐして中に入れ、お米がつぶれないようにふんわり握ったおにぎりが、うさのは大好物だ。

「いっただっきまーす」

海苔の香り。
ちょうど良い塩加減。

うん、おいしい♪

噴水に日の光が反射して、キラキラまぶしい。

まぶしいのとおいしいので、うさのは目を細めた。
開放感とおいしさで、心もほどけていく。

さ、もう一口・・・

と、うさのが口を開けた、そのとき。

おにぎりの中から顔をのぞかせていたシャケがひとかけ、地面に落ちた。