「長年連れ添った婆さんには、本当に感謝してるんじゃが、なかなか“ありがとう”を言い出せなくてな。」 ―それだけがやり残したことなんですね。 小さく頷いた。 「もう遅いんじゃがな。」 哀しそうに、一粒、涙を流した ―大丈夫ですよ。そんなに感謝していたら、きっと、ちえ子さんは気づいてますよ。あなたに感謝されていることに。