1万2562円。



これが俺の全財産。



先輩から譲ってもらったバイクは、売れば多少金にはなりそうだ。



でも20万で買ったバイクを易々手放すのも惜しい。



「金ねぇ~!!」



自分の部屋に戻り、癖のように携帯を開いた。



なにをするわけではなくて、携帯がないと落ち着かない。



『藤本 ユズ』



ユズの番号を出し、ただ眺めた。



ヤるんじゃなかった…。



ってか、ガキってなんだよ…。



かなり面倒だ…。



ってか、俺もユズも気持ち良かったんだからお互い様だよな?



合意の上だし。



「お互い様だ」



パタッと携帯を閉じ、そのまま目も閉じた。



雨が降り出しそうな天気は頭が痛い。



そして眠い。



どれくらい寝たかわからない俺は、おかんの声で目を覚ました。



「話しがあるんだけど」

「話し?後にしろよ…うるせぇな…」

「いいから来なさい」



うちは片親だ。



親父は昔に会ったっきり、どこに住んでるのかも知らない。