「いや。もういいでしょ。…帰る。」

「なに言ってるんですか!貴方は熱があるんですよ!?」

「もうっ…た、くまには、関係ない、でしょう!?」

やだ。
泣きたくなんかない。
泣きたくなんかないのに…。

もう止まらなかった。
堰を切ったように涙が次から次へと溢れ出す。

「もう放っておいてよっ!!」

次の瞬間、あたしは琢磨の腕の中にいた。

「放って置ける訳ないでしょうっ!お願いだからこれ以上心配させないでください。お願いですから…!」

今にも泣きそうな琢磨の声にあたしは黙った。

大人しくなったあたしを琢磨は自分の腕から解放した。

「ごめんなさい。今更抱きしめたりなんかして。少しこれに頼り過ぎたのかもしれませんね。」

自嘲気味に笑いながら、琢磨は薬指にある指輪に触れた。
あたしとお揃いだった、あたしが外せなかった指輪を。