「もう守るべき屋敷などは無い。
これからは心行くまで好きに出来る。
チャクラの消えてしまった鳶人は何も覚えていない。
願わくはこれからは鳶人の姉として、
あの子に優しくしてやって欲しい。
君に約束する。
この島の弁財天の背後に私の刀・正宗がある。
普段は見えないが、
君が感情を高めて捜せば見えるようにしてある。
もし君たちに災いが降りかかるような事が起これば、
それを鞘から抜いてくれ。
そうすればどこに居ようとすぐに駆けつける。
私の願いは、あの子が笑顔で暮らせる事だけだ。
君たちの父親との親子関係はうまく行っている。
孝史も… だから君に頼みたい。」
かおるは信じられない事だと思いながら、
それでも不思議と納得出来ていた。
不可解ながら、
ギナマとの十日間の記憶も、
それまではほとんど消えそうになっていたのだが、
実鳶を前にしている時ははっきり思い出していた。
鳶人のあの雰囲気は、
年齢こそ違うがまさにギナマだ。
まだ4歳だから会話もはっきりしないが、
自分を見つめた、
あの涼しげな眼差しは間違いなかった。
彼らの特殊なチャクラを使えば、
時間のコントロールなど苦になるものではなかったのだろう。
鎌倉で会ったギナマは、
16歳と自分で言っていた。
それなりに身長があり綺麗だったが、
不確かで痩せていてとても軽かった。
そして今ここにいる鳶人は、
それこそ父と同じで、
全ての記憶を失ったただの幼い子供、
何の力も無い、ただの4歳の幼児だ。
鳶になって現われた実鳶の話を聞き、
そんな事を思いながら、
かおるは胸に詰まっていたものが下りたような気持ちだった。
「お姉ちゃん、
そんな所で居眠りしては風邪を引くよ。
窓まで開けちゃって… 」

