銀杏ララバイ


そうこうしていると、
早く着いたと言う客が現われ… 

とにかく話は落ち着いてから、
と言う事で二人は奥の私室に案内された。


それからの数時間、
父と多恵はひっきりなしに動き回っていた。

夕食もいつ食べたのか分からないぐらいで、

お客のように、食事を用意してもらい、
布団まで敷いてもらった2人は落ち着かなかった。

そう、忙しそうに動き回っている父と多恵の様子を考えると、

ゆっくり食事をする気分には慣れなかった。


しかし鳶人は慣れているのか、

隣の部屋で窓を開け、
銀杏丸と名前をつけた鳶を入れ、

時々二人の方を見ながら遊ぶように食事をしていた。

まさに鳶が鳶人の世話をしているような光景だ。

看板に書かれていたイメージとは違い、

その鳶が鳶人の食べ物を盗る事はなかった。



「客が入っていても構わないから、
適当な時に風呂に入ってくれ。

これからの事は明日の午前中、
客が帰ってから話したい。

それで良いかなあ。

私としてはここで暮らして欲しい。」



2人分と、隣の部屋の鳶人の布団を敷きながら、

父が改めて自分の気持ちを口にした。

しかし客の布団を敷くためにすぐに出て行ったから、

返事も出来ない2人だった。


孝史とは異なり、
まだはっきり自分の気持ちを整理していないかおるには幸いだった。


どうやらカウンター仕事は父、

食事を作るのは二人、

食事室へ運んだり食器を片付けるのは多恵、

布団を敷くのは父、

客が帰った部屋を掃除するのは多恵、

風呂場の掃除は父、

と役割分担が出来ているようだが、

それでも、客室4部屋の宿の仕事は大変なようだった。