銀杏ララバイ


「私の子… だよ。
食が細いからちょっと小さいが… 」



4年間は子供として育てているが、
生まれた時の記憶が無いからか、
父は弱い口調で、
紹介するように鳶人の頭を撫でた。



「ええ、確かに柳井さんの子ですよ。

柳井さんに記憶が無かったから、
警察も何か事件に関係があってはいけないと言って、

ええ、記憶の検査をしてもらった時に

親子関係の検査もしたから間違いはありませんよ。

血液型はBです。
柳井さんはOですけど、
それも可能性としては十分あるのですって。」


「僕もBだよ。お姉ちゃんはO。
じゃあ本当に弟か。」



孝史はそれだけで嬉しそうな声を出しているが、

かおるは複雑な気持ちになって来た。


自分たちにとって大切な存在だったギナマ。

彼にこんなに似ていると言う事は、

嬉しいという言葉で片付けられない
得体の知れないような気持ちになっている。


そして… 
この子は父の子供かも知れないけど、
母親は誰なのだ。

少なくとも自分たちの母ではない。


4年前に赤ん坊だったと言う事は、

母と離婚してすぐに他の女と親しくなり、

この子が生まれたと言う事ではないか。

孝史はともかく、
16歳のかおるにはそう言う事情が理解できた。

やっと会えた父だが、
孝史のように素直に受け入れられない。


それでは私たちを育てるために、
一生懸命働いて死んでしまった母さんがかわいそうではないか。


父さんが保証人になったために
離婚したと言うのに… 

こんな事なら会いに来なければ良かった。

そう考えるかおるの心は、
完全に氷のように硬く冷たくなっていた。