銀杏ララバイ


今まではかおるがしっかり尋ねてくれていたから、
聞き方は覚えている。

今、何故か姉は躊躇しているが、

せっかく宿の人が来たのだから聞かなくては、
と孝史が代わりに声を出した。



「この人って… 柳井さんに似ているわね。」



写真を見た女はすぐに返事を返して来た。

えっ… その一言で
2人は呼吸が止まりそうになった。

柳井さん… 父の事なのだろうか。

両親が離婚するまで
自分たちは高見ではなく柳井姓だった。



「あの、その柳井さんって、
柳井孝一と言う名前ですか。
いま47歳ですか。」



今度はかおるが、
過度の興奮を必死で抑えて、
女に尋ねている。

父なら今47歳のはずだ。

もしそうならば… 



「さあ、正確な歳は分からないけど、
ここにいる柳井さんは四十代だよ。

今呼ぶから自分たちの目で見ればいいさ。
ちょっと待っててよ。」



女はそう言って奥へ入って行った。



しばらくして宿の半纏を着た男が、
小さい男の子を連れて出て来た。

その後ろにはあの女も… 



「父さん… 」


「父さん… 」



かおるも孝史もその男を見て、
そう叫んで駆け寄ろうとした。

確かに父だ。

父が… 5年も行方が分からなかった父が、
今自分たちの目の前に居る。

こんな事が起こるとは
想像も出来なかったが… 

実際自分たちの前にいるのは、
確かに父・柳井孝一だ。