江の島へは江ノ電と言う電車で簡単に行けた。



「あの島が江の島だね。
あの橋みたいな道を渡ればすぐだ。」



2人は無事に着けたことに感動しながら、
江の島大橋を渡っている。

歩道は勿論、
車道も出来ている立派な橋だった。



「お姉ちゃん、あそこに飛んでいるのは
カモメじゃあないよね。
カラスでもないし… 

ちょっと小さいように見えるけど、
さっきの仲間かなあ。

あ、あそこに鳶に注意、って書いてある。
じゃああいつらは鳶だ。

どうして注意だろう。
飛んでいる姿、格好良いのに。」



確かに橋の歩道の数箇所に看板が立てられ、
鳶に注意、と言う言葉の他に
鳶が数羽飛んでいる様子が描かれていた。

色もカラスの真っ黒とは異なり暗褐色だ。

そして上空を飛んでいる鳶も
確かに暗褐色だった。



「さっき孝史だって
手に持っていた銀杏をとられたでしょう。

きっと観光客の食べる物を狙うんじゃあない。

景色も綺麗だし、
釣りをしている人もいるし… 
ヨットやボートも浮かんでいる。

ほら、あそこだけでもあんなに広い駐車場が出来ている。

それだけ観光客が多いのよ。

向こうにはお土産やさんやホテルや旅館も沢山ある。

父さんがどこかの宿で働いていたら良いのにね。
私、絶対に見つけるわ。」


「僕だってさ。
だけど、どうして鳶がこんな所に居るのだろう。

普通あんまり見ないよね。」



本来の目的、
父を探し出す事、に気持ちが動いたはずなのに、

孝史は初めて見る、
群を成している鳶の乱舞に心を奪われたようだ。


鳶は日本中の低い山や海の近くに
群を成して生息するもののようだが、

孝史が住んでいた東京や
横浜の団地では見たことが無かった。

カラスやスズメ、鳩は見ていたが…