「孝史、怪我は無い。」


「うん。だけどあいつ、どういうつもりだ。

僕の銀杏を盗んで、
いや、銜えて行ってしまった。

あれはギナマだと思ったのに… 
そんな事は無いね。

銀杏だから鳥が狙った。
そうだけど、何となく嫌な感じだ。

それにしてもギナマたちはどうなったのかなあ。

僕たちどうしてここにいたのだろう。」



孝史もその時になって初めて真剣に考えている。

確かに昨日、一緒に夕食を食べ… 
それからギナマは決着をつけるとか言って
怨霊たちと戦っていた。

自分たちもホースを抱えてギナマの味方をした。

その内に体が動かなくなったような… 

何か爆発のようなものが起きた気もする。


そして何故かここにいた。

どう言う事なのだろう。

はっきりとは言えないが
断片的に覚えている。


しかし… こんな所にいたと言う事は、
夢でも見ていたと言うのか。

そう言えばギナマの家はどこだったのか、
それが分からない。

ギナマの顔や名前ははっきり覚えていると言うのに。

かおると同じように、孝史もそんな事を考えていた。



「そうね。まさか私たち、
ここで夢でも見ていたと言う事は無いわよね。

怨霊とかチャクラ、結界なんて事を
人に話すわけにも行かないし… 

ギナマの家があったと思われる場所を探したいけど、

何だか頭が混乱しているみたい。

まず江の島へ行って見ない。

これが全て夢ならどうしようも無いし、
嘘かも知れないけど、

父さんがいるのなら捜したい。
孝史はどう。」


「僕も捜したい。
父さんがいれば、僕たち、
あんな施設に戻らなくても良いんだよね。

その後でここに戻って来て
ギナマの家を探そうよ。」



2人の考えは一致した。