「ギナマったら、
私たちの行動に合わせてくれれば良いのに

あんな方へ行ってしまったわ。
またこっちに来てからね。

それにしても、あの鎧武者はどこなの。

何のためにあんな格好をしていたのって聞きたいわね。」


かおるは、警護だと言うのに役に立たない鎧武者に
ギナマのために腹さえ立てている。

しかし、どこにいるのか見えないが、
戦っている刀と刀がぶつかり合う金属音が不気味に続いている。


しばらくはただの傍観者のように、
外の音に神経をめぐらせていた2人。

気持ちは益々高騰して来ているが、
何故か体が重くなったように感じた。


まるで足に根が生えたように、

ギナマの様子を見ようと動こうとしても、

気持ちは動きたいのだが、体は動けない。


そして外の空気は益々赤みを帯び、

まるで夕日に照らされ黄金色に輝いているススキの穂が、

いきなり本物の炎に襲われ
収拾が付かなくなっているような、

言葉では表現できない不気味な赤に変わっている。


その内に2人は眠くなり… 

その時だった。

必死で睡魔に耐えていた2人の周りで

突然爆弾でも投げ込まれたように
空気が大きく轟き、

真っ赤な爆発の噴煙のような事態が沸き起こり… 

驚く間もなく、
2人はそのまま完全に意識が無くなってしまった。








「孝史、孝史… 起きなさい。」


気がついたかおるは、

自分たちが鶴岡八幡宮のあの倒れた銀杏の木の根元に

寝転んでいるのを発見し、

慌てて隣にいる孝史を起こした。

どうして自分たちがこんな所で…