銀杏ララバイ


仕方なくかおるは
隣室のギナマに目を遣った。

孝史が見つめる中、
ギナマは死んだような状態で横たわっている。

まるで今までの活劇が嘘のような様相だ。

辛そうな様子で、
辛うじて弱々しい呼吸をしているが… 

医者と看護師が何かしている。


ただでさえ白いギナマの顔が、
血の気の無い青白さに変わり… 

そんなギナマを見ている内に、

いつしか2人は母の死を思い出し、
震えさえ覚えている。



「ギナマ、どうしたの。
死んじゃうの。」



孝史はギナマの側で恐怖と戦いながら、
やっとその言葉を出した。

かおるは隣室に座ったまま動けなかった。

さっきは颯爽とした剣士だった。

それなのに何があったと言うのだろう。

どうしてこんな姿に… 
あの毒ガスを吸ってしまったのだろうか。

でも、彼はこの地下室にいたのだから… 


かおるがギナマの様子に驚き、

孝史のように近寄れなかったが、
自分の心と葛藤しながら考えていると、

医師がかおるに何かを伝えようとしている。

それで、かおるは孝史の隣に移動した。



「私はこの家の主治医で横沢と言います。

銀杏丸(いちょうまる)様は生まれつきお体が弱く、
これは時々かかる症状ですから… 

もうすぐ意識が戻ります。

私どもはこれで戻りますから後はよろしくお願いいたします。」



そう言って2人は部屋から出て行ってしまった。


銀杏丸… 彼もギナマの事を銀杏丸と言った。