それは若い女が庇うようにしていた老女に向かって、
黒い影が切りつけようとしていた時だった。
誰の顔もはっきりとは見えなかったが、
とにかく老女に向かって刀を向けているのは見えた。
そうなればする事は一つだ。
孝史に出来る事は…
見れば刀を握ったギナマも気づいて駆けつけていたが、
孝史の蹴ったボールの方が早かった。
黒い影は不意を付けれた形で転がり、
どこかに消えてしまった。
「孝史… 」
ギナマは驚いた顔をして2人を見て…
一言孝史の名前を口にしただけで、
女が寝かそうとしている
老女の動きを手伝っている。
2人も言葉はなく、
ただその光景を黙って見ているだけだ。
しかし、気づけば
アレだけ騒がしかった音が見事に止み、
周りは静かな雰囲気に変わっている。
あの鎧武者は… あの黒い影は…
2人は何も口にしないが、
いろいろな事を考えていた。
この人がギナマのおばあさまなのか。
遠くへ行っていると言っていたが
地下室にいた。
それにしてもあの女の人と言い、
さっき走り出た人と言い、
このおばあさまも…
何だか昔の人みたいだ。
「助けてくれて有難う。
さすがに銀杏丸(いちょうまる)が好きだと騒いでいるだけあって
勇敢なお子たちだ。」
布団に横になり、少しすると、
老女は2人を見て
優しい口調で声を掛けてきた。
しかし何故かギナマも、
隣の部屋で布団の上に寝転んでいる。
そしていつの間に来たのか、
医者らしき男と看護師らしき女が側にいる。
そう、老女の側ではなく、
ギナマの側にいて
なにやら治療をしている雰囲気だ。

