銀杏ララバイ


「違うわよ。アレは剣で戦っている音よ。
あの鎧武者よ。

彼が誰かと戦っているのよ。
音からすると一人ではないわね。

危ないから帰ろう。
巻き添えを食ってもたまらないわよ。

どうせ泥棒同士で宝を取り合っているのよ。」



かおるの想像では、
あれは盗賊の宝をめぐって泥棒同士が闘っている場面だ。

納得の行く考えのようでもあるが… 



「だけど… 僕見たいよ。
キチンと見てから
ギナマに教えてやらなくては。」



孝史はあくまでも
ギナマは何も知っていないから、

自分たちが知り得たことを伝えなくては、
と思っているようだ。

そう言われて見れば
かおるも興味が出ている。

怖いけど、ここまで来たのだから、

事の真相を突き止めたいような気持ちになっていた。



「見つからないように隅のほうで見るだけよ。」



かおるは自分にも戒めるように囁いて… 

2人は壁際を腰をかがめて進んでいる。



「サッカーボールだ。
どうしてあんな所にあるのかなあ。」



息を殺して進んでいる二人の前に、
無造作に転がっている真新しいボールがあらわれた。



「きっとギナマよ。
彼、孝史が教えたサッカーが気に入ったようだから、

ここにも持って来たんじゃあない。」



かおるは、こんな所にまでサッカーボールを持って来た、
ギナマの考えなど分からなかったが、

何となく皮肉めいた言い方をしている。



「あ、お姉ちゃん、あそこを見て。
誰かが寝ていたのか
布団が敷いてある。」



孝史が指差す方を見れば、
音のする方角とは反対の所に
こじんまりした座敷があり、

かおるも確かに布団が見えた。



「あ、危ない。」



そう叫んだ孝史、
急いで転がっているサッカーボールを拾い、

足元に置いて勢いよくシュートした。