これで決心がついた、と言う様な言葉を出して、
孝史に確認しているかおる。



「うん。だけど… 
さっきのギナマ、すごく悲しそうだった。

僕たちと別れたくないのだよ。」



頭では、ここはおかしい。

かおるの言うとおり
空気が戻ったら早く離れたほうが良い、
と言う事は分かる孝史。

しかし、ギナマとの別れを考えると、
寂しいような悲しさを感じてしまう。

それでつい決心を鈍らす言葉を出している孝史だ。



「そう、さっきはね。
でも今のこれは何なの。

こんな現象、私、初めて。
そうよ、こんな映画を見たことがある。

これは毒ガスよ。
確かに窓を開けなければしばらくは大丈夫かも知れないけど… 

どうしていきなりこんな事が起こるの。」



言葉はまともに聞こえるが、

かおるは完全にパニックに陥っていた。

自分たちは何故こんな所にいるのか。

ここに来てしまったと言う後悔の念が膨らみ… 

これは悪夢だ、
夢よ、早く覚めてくれ、と祈りたい気持ちだった。


そして言葉にはしなかったが、
自分たちをこんな所に連れて来た
ギナマを恨んでいた。

初めから何かおかしいとは思った。

しかし、施設を飛び出して… 

あんな所で夜を明かすより、
幸せな思い出を共有しているような
ギナマの好意が嬉しかった。

母が死んでから、
自分たちに温かい言葉を掛けてくれたのが

ギナマだけのようにすら感じられていた。


それなのに、こんな事に直面するとは… 

自分たちは、そんなに悪い子ではなかったはずだ。

それなのに… 神様はひどすぎる。