銀杏ララバイ


孝史は、ギナマの悲しそうな様子と、
どうにもならない状況の板ばさみで
泣きたいぐらいだった。

きっと、かおるも同じだろう。



「あ、しまった。」



しかし… 
いきなりそんな言葉を出してギナマは外へ飛び出した。

今まで打ちしおれた様子で
消えそうだったと言うのに… 

驚いた二人はギナマが飛び出した庭を見ている。



「動かないで。そこにいたら安全だから。」



すぐ近くでギナマの声がしているが、
何故か姿は見えない。

どうなっているのだろう。


訳のわからない二人だったが、
ギナマの言葉通り
動かずにダイニングの窓越しに庭を見ている。

大きなガラス窓だからかなりのところまで見えるが… 
何も見えなかった。


が、よく見ていると
室内の空気は何とも無いのに、
建物を取り巻いている空気が… 

見事に晴れていたのに、

見ている内に庭を取り巻いている空気が暗くなり、

無色透明のはずの空気が
はっきりと灰色になっている。



「お姉ちゃん、おかしいよ。
どう言う事かなあ。

安全だ、って聞こえたけど、
庭は危険と言う事か。

あの暗い空気… 
毒ガスでも撒かれたのか。
ギナマは大丈夫かなあ。」



孝史は毒ガスなんて言葉まで使って、

それでも姿の見えないギナマを案じているようだ。



「分からないけど… 
やっぱりここには秘密があるのよ。

ギナマ、すごくいい子だと思ったけど、
まるで二重人格者みたい。

この空気が戻ったら急いでここを離れましょ。

こんな変な空気を吸ったら駄目よ。
神経がおかしくなるかも知れない。

とにかく荷物をまとめておきましょ。
分かったわね、孝史。」