母と死別したところの孝史、
やっと心の友と再会して
温かい気持ちになったところだったが…
どうしようもないと言う事は分かっていても悲しいのだ。
「見たの。その鎧武者を君たちが見たの。
だからここを出て行くの。」
それまでは氷結したように呆然としていたギナマ。
やっと出した言葉がそれだった。
しかし何故か、
鎧武者が出たと言うその事で怯えている様子ではない。
ギナマのその顔は、
絶望感や恐怖が、
いや孤独の恐怖と戦っているような不可解な様相を浮かべて
二人を見つめている。
「ええ、見たのは昨夜だけだけど、
足音だけならその前の深夜にも聞いたわ。
同じ足音だったから間違いは無い。
悪意は感じなかったけど
どう考えても普通ではない。
絶対に警察に知らせるべきよ。」
かおるの言葉は全てギナマの為だったのだが、
どうもギナマの反応がおかしい。
「それでどうして君たちが出て行くの。
もう飽きてしまったの。
私といるのが嫌になったの。
ここが嫌になったのだね。」
自分たちは夜中に怪しい人影を見た、と言っているのに、
どうもギナマは話の要点を間違えているようだ。
かおるは頭を整理しようと必死だ。
「違うよ、ギナマ。
少なくとも僕はお姉ちゃんの次にギナマが好きだから
離れたくは無いよ。
だけど警察が来れば…
僕たちはここにはいられない。
だから… 仕方が無いんだよ。」
孝史も考えていたらしく、
的確な言葉を出している。

