銀杏ララバイ


しかし二十七歳の時、
右大臣に付いた儀式の帰りに
鶴岡八幡宮の境内の石段で、

父・頼家に代わって将軍になった実朝を、
親の敵と思い込んだ甥の公暁に刺し殺された。


真意の程は分からないが、
今年倒れたあの大銀杏の木に
公暁が隠れていたと言う話も伝わっている。

そう、ギナマの家の庭にあった石碑の歌や、
暗殺された大銀杏の隣の石段、

それらは実朝に関係している上にギナマも… 

奇しくも二人がギナマと再会したのも
あの石段だった。

偶然だろうが… 

何となく気になった2人は、
歴史上の出来事をしっかり把握しようと読書に入っていた。



「今日もサッカーをしよう。」



昼食前に二人の前に顔を出したギナマは、
食後しばらくして孝史を誘っている。

その様子には昨日の気配は全く残っていない。


かおるを見る時には、
心なしか照れくさそうな表情もするが、

孝史とは、
見かけは異なっているがまるで兄弟、
いや同じDNAを持つ分身者のような態度で接している。



そして真夜中、
一応二人は布団に入っているが
枕元にはパジャマの上に羽織る上着を置いている。


ややもすれば眠りそうな孝史だったが、

かおるの言葉を信じて、
足音の正体を突き止めるつもりだ。

来た… かおるの言葉通り、

しばらくするとどこからか、
重々しい足音が起こって来た。

広い庭だからどこから来たのかはっきり分からなかったが、

それでも二人の部屋のほうに
向かって来ているように感じられる。



「真正面から見れば見つかるかも知れないから、
足音が少し離れてから覗こうね。」



かおるは慎重の上にも慎重に、
とばかりに孝史に声を掛けている。