とにかく広過ぎて、
落ち着かない感じがしている。
「何か必要なものがあったら何でも言って。
すぐに揃える。
私は朝は眠っているから
適当に食べて欲しい。
台所に行けば大体は揃っているはずだから、
自分たちでやって。できるか。」
ギナマは簡単に説明して、
2人がその言葉だけで暮らせるかを
心配しているような顔をした。
「ギナマ、朝は食べないの。
何か作っておきましょうか。」
ただで泊めてもらっては悪いからギナマの朝食でも、
と思って声を出したかおるだ。
朝食は,少しでも母を休ませようと、
毎日かおるが、
自分の弁当も含めて支度していたから
少しも苦にならない。
「朝は眠っているから食べない。
私は昼まで眠っているから
起こさないで欲しい。
誘っておきながら申し訳ないが、
2人で適当に暮らして欲しい。
でも来てくれて,とても嬉しい。」
そう言ってギナマは
自分の部屋の方角へ歩いていった。
残された2人は
ニ間続きの一部屋に布団を並べて敷き、
もう一部屋の箪笥に
持っていたものをしまい込んだ。
「孝史、先にお風呂に入りなさい。
だけど何となく心細いから、
私、あそこの廊下で待っている。
孝史も出たらそうしてね。
今日だけだから。」
「分かった。
僕もそうしようと思っていた。」
そうなのだ。
誰もいないと言われても、
こんなに広い家に入った事のない2人には、
不気味に感じる気持ちも大きかった。
ましてや、風呂に入っている間に何かがあっても、
分からないではないか。
2人っきりの姉弟、
離れてはいけないような気持ちになっていた。

