銀杏ララバイ


「一緒に転んだのは
ギナマが痩せていたからだぞ。

僕はあの時1年生だったけど、
ギナマだってお姉ちゃんと同じ5年生と言っても、
もっと小さく見えた。

ちょっとぶつかったぐらいで一緒に転ぶなんて、
アレはギナマのせいだ。」



何故か孝史も覚えていたようだ。



「うん。分かっているよ。
あの頃の私は弱かった。

子供と遊んだ事が無かったから、
とても心に残った。

孝史の感触、今でも忘れないよ。
つばが私の手にかかり… 
ちょっと舐めたらキャラメルの味がした。

それからお母さんが私にもキャラメルをくれた。」



キャラメル… 
ギナマは二人が忘れていた事まで鮮明に覚えていた。

そしてそれを、
懐かしそうな表情を浮かべて話している。


あの頃は確かに、
孝史は興奮すると口の中のものをよだれにして出す、
まだ赤ちゃんの面影を残していた。

あの時もいろいろな物を食べながら遊んでいたから、
多分口の中に入っていた
キャラメルのよだれが
ギナマの手に付いたのだろう。

と思うと、おかしいような楽しい気持ちになっているかおるだ。


あの時は自分も一緒にいたが、
ほとんどはこの二人がじゃれ合っていた。

まさかあの時のギナマが自分と同い年とは、
想像出来なかった。 



「じゃあ、おばあさんと一緒に暮らしているの。」



かおるは、もう帰らないと、と思いながら
ギナマの家族が気になっていた。


自分たちのことは既に孝史が話した。